花のような香りが漂い、鳥の囀りが聞こえ、
うっすらと霞がかかってひんやりとした幻想的な空間は、まるで森の中。
舞台上に、ハットを被ったパフォーマーが現れ、
「何か聞こえる、どこかで音がしませんか?」と問いかけます。
自然の音と香りに包まれる空間で、
手を叩く音に共鳴するように、ひとりまたひとりとメンバー達が登場。
どうやらこの森で、
響き合う音の宴が始まるようです。
それぞれの音色が奏でられる中、「響宴」のイントロとともに、月から雲に乗って降りてきた天女の如く、紫の衣を纏った姿の柴咲コウが現れます。
森の中に降り立ち、歌う2曲目は自身が出演した2013年放送のドラマ『安堂ロイド〜A.I. knows LOVE?〜』挿入歌「woh woh」。
優しい明かりの中で歌い終えると、光の色が変わり水の中のような静謐さを感じさせる雰囲気へ。
3曲目は2017年大河ドラマ『おんな城主 直虎』の挿入歌「わたしが竜宮小僧だったとき」。
コーラスも入り、ライブならではのアレンジに。
また水を連想させる曲が続きます。
4曲目は「泪月 -oboro-」。
2002年公開映画『黄泉がえり』挿入歌です。
映像は一切使用していないにも関わらず、まるで映画の中に入ったかのような世界観。
そして5曲目は、おなじく映画『黄泉がえり』の主題歌「月のしずく」。
バックには明るい月が浮かび上がり、まさに柴咲コウ自身が"月のしずく"のよう。
舞台が暗転したと思うと、川のせせらぎが聞こえ、背景の円が赤く染まり、神社の鳥居のようにそこに境界が生まれます。
やがて水色の着物を纏った柴咲コウが現れ、おもむろに円の前へと進み、二礼二拍手そして祈りを捧げます。
振り向くと、そこには傘をさしたパフォーマーが。
お互いに歩み寄り、傘が手渡されます。
そして去りゆくパフォーマーを追いかけようとするも、別の方向へと進み、傘を置くのでした。
ここから6曲目「紫陽花」の世界へ。
パフォーマーとの交わりが楽曲とリンクして、一曲の中で幾つものストーリーが見えてきます。
雨音の中、傘が置かれ二人は見つめ合うものの、やがて相手を拒むように。
7曲目は、「雨音はショパンの調べ」。
そして8曲目は2023年公開映画『ミステリと言う勿れ』主題歌「硝子窓」。
しっとりとした空気で二曲を終え、丸太に腰掛け「そして僕は途方に暮れる」の歌唱がスタート。
時に座り込み、彷徨いながらの歌唱。
全ての曲が、物語の一部のように見えてきます。
歌い終え天を仰ぐと、そこには満点の星。
次の曲は2022年公開映画『沈黙のパレード』主題歌「ヒトツボシ」です。
暗闇を照らす星に囲まれての歌唱を終え、雨の中、フラフラと置かれていた傘のもとへ。
その傘を開いた途端、轟音とともに雷に打たれてしまいます。
視界が光でいっぱいになったかと思うと、まるで生まれ変わったかのように傘の中からパフォーマーが出現。
情熱的な舞を披露します。
音楽はアップテンポへと変化し、「無形スピリット」の世界に突入。
そして柴咲コウが再度登場!
「n0w」、「Intoxicated」とノンストップの激しいリズムで会場の一体感が一気に高まります。
さらに、「よくある話 〜喪服の女編〜」ではパフォーマーのパフォーマンスも交えて歌い、新曲「想待灯」へ。
心臓の鼓動が速まるような曲の数々、アップテンポの締めは「ラブサーチライト」。
会場の熱気はMAXに到達。
激しい閃光の中曲が終わると、何やら鈴虫のような音色が。
季節の移ろいを知らせるように、ギターのメロディが響きます。
次の曲は、「瞳をとじて」。
2004年公開映画『世界の中心で、愛をさけぶ』の主題歌。
コーラスの声とも重なり合い、ここだけのハーモニーが生まれます。
その透き通るコーラスから始まった続いての曲は、2008年公開映画『容疑者Xの献身』主題歌「最愛」。
美しくも切ない光に包まれて、人生の出会いと別れに思いを馳せずにはいられない、そんな空気で会場が満ちていきます。
そして鈴の音とともに現れる人物と、傘を手に取る柴咲コウ。
二人は歩み寄り、今度は柴咲コウが相手に傘をさすのでした。
連れ添い歩き、やがて別の道へ。
ここで19曲目「ひと恋めぐり」の歌唱。
さらに「かたち あるもの」へと続き、しっとりとしっかりと、空間が重みを持っていくようです。
曲の最後には、柴咲コウが一輪の花を手に取り、大切そうに胸の前で持ち顔を埋めます。
そしてそのまま、オープニングの一曲「響宴」を再披露。
循環、還元、輪廻を感じさせる原点への回帰。
しかし曲も、会場の空気感も、最初とは全く別の様々な経験を経た色へと変わっています。
歌い終え、パフォーマーに羽織を掛けられ花を手渡すと、雲の中月へと帰っていく柴咲コウ。
振り返り、一礼して舞台を後にするのでした。
〜Encore〜
鳴り止まぬ手拍子に迎えられ、柴咲コウが再登場!
今回のツアーと連動するEP『響宴』の話や、『ACTOR'S THE BEST』のコンセプトについて、映像作品と楽曲の深いつながり、時間を超えた力、俳優/アーティストとしての両面を感じてほしいと語ります。
また各地で感じたことやメッセージも語りつつ、今回の『響宴』のライブについて、「一人の女性の人生を写し出し、様々な歌が散りばめられつつ、恋をして、愛を育んで、時には辛い別れを経験し、もしかしたら再会があるかもしれないと想像して、歌を繋いでいっています。そこから"お芝居と歌の融合"を感じてほしい。」と語り、自身も活動を続けていきたいと話しました。
アンコール一曲目は「TRUST」。
人に会うことが難しい環境下で、メンバーシップ KO CLASS会員のコーラスを取り入れて作られたこの楽曲により、会場の人々と柴咲コウが一つの姿へと結ばれていきました。
最後の楽曲は、ドラマ『ガリレオ』の主題歌「KISSして」。
思いっきり弾けるこの曲で、観客の皆さんも総立ちでタオルを振り、その日ごとにアレンジされた「KISSして」のフレーズに大盛り上がり。
惜しみない投げキッスの雨とともに、会場の興奮冷めやらぬ中ライブは終幕。
またいつの日か、巡り会えますように。